Amosapientiam

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創作自然言語バート語の文法を勉強した

概要

創作自然言語というものを知っているだろうか? 我々が普段喋っているような言葉を、プログラミング言語や数式体系などと対比させて「自然言語」と呼ぶことがある。 その「自然言語」のようなものを、あたかも劇を作ったり、歌を作ったり、小説を書いたり、ゲームを作ったりするのと同様に、創作する人々がいる。私は、この「人によって創作された自然言語」を「創作自然言語」と呼んでいる。 一般にはその界隈の人には「人工言語」と呼ばれることが多いが、プログラミング言語や何らかの符号体系も「人工言語」と呼ばれて名称が被るので、私は好んで「創作自然言語」と呼ぶことが多い。 自然言語創作と言ってもピンと来ないかもしれないが、例えば

  • この言語にはこういう語彙があり
  • この言語はこういう文法を持ち
  • この言語の動詞はこういう活用をして
  • ...

のようなものを決めて行く営みだと思えばよい。 創作物の言語がなんであるかのスタンスは創作者によってまちまちであり、例えば「ゲームや小説の中のように架空の世界に架空の民族がいて、彼らが喋っている言語」というスタンスで行う人もいれば、「この言語は我々現世の人が趣味として/何らかの目的で用いて意思疎通するためのものである」というスタンスを取るものもある。 全者の例だと「星界の紋章」という小説で、その中の民族が用いているという設定で作られたアーヴ語というものがあり、後者の例だとエスペラント語というものがある。

今回は前者のスタイルの創作自然言語のひとつである、バート語というものを勉強してみた。

バート語について

(place holder: いい感じの記事を見つけたらそこへのリンクに差し替えます)

勉強の進め方

bhátán | bhaataan を見つつ、バート語がわかるお二方(@hsjoihs氏, @MIT氏)に適宜コメントをもらった。

文法学習ログ

会話しながら学習を進めたので、そのログを整理して載せる。

Section 1. 音韻

音素と表記

まず、バート語の音素インベントリを眺める。

音素inventoryと転写法

無声/有声と無気/有気 で4対立があるらしい。なんか音声的にはインドの言語っぽさがある?そり舌音を持っているところにもそういう雰囲気がある。(ひとさまの創作物をOOっぽいとしか認知・分類できない乏しい己の知識よ...)

音声表示の左隣にあるのは転写法だろう。áíúṣṭḍḷṇ などの文字が楽に打てたいので、wincomposeというアプリで専用の入力方法を割り当てておく。 「バート語」のなので、 "b" を用いて

# Bhatan
<Multi_key> <b> <a> : "á"
<Multi_key> <b> <i> : "í"
<Multi_key> <b> <u> : "ú"
<Multi_key> <b> <t> : "ṭ"
<Multi_key> <b> <d> : "ḍ"
<Multi_key> <b> <l> : "ḷ"
<Multi_key> <b> <n> : "ṇ"
<Multi_key> <b> <s> : "ṣ"

にした。(微妙に打ちづらい...)

転写では文頭の大文字化をしないらしい。

似た音が結構あるが、僕には言い分けが難しい音がいっぱいだ。

ゆーちき「ここがミニマルペアになる語は割と少なくて言い分けられなくてもなんとかなったりしないかな...」

hsjoihs「ṣl- はまあまあマージナルで、まず現代語では「語末 -ṣlo」にしか出ず、それ以外は ṣ に合流している」

MIT「無気有気反舌の対立は結構機能負担が小さいので、多分母語話者も lexicon に寄った聞き分けをしてると思います。あと g/gh は gh[ɣ] が基本と思った方がよいはずで、これは非自明そう。l/ḷ は固有語では条件異音なので、流音は2つ説があります。」

なるほど

イントネーション

基本は文節の最後が上がり、文全体の最後は平叙文なら penultimate, antepenultimate 辺りから下がっていき、疑問文では下がった後に上がるらしい。

直観的な図が記載されていた。

イントネーションの図

私が単語と短文をいくつか読み上げてみた。

ema. ammán. nutta. rúkasa. ammama. rakkama. aṭaza. sujadína su. sujamúná su. adheṣ. heyákáṣlo? cákíkamúná síbha? káṇa nána bháma cákíkadíha hem?

hsjoihs「ataza の z は無声ですね。ほかはだいぶできていそう」

Section2. 文字

バート語の文字

これはちょっとやそっとや覚えられない... また今度覚える...

Section3. 統語論

【1-1 文構造】 関係詞以外基本的に前置修飾。動詞は語末。[格変化した名詞]* [名詞+後置詞]* 動詞 の語順をとりやすい ただし[名詞+後置詞]は動詞より後ろに来てもよい。

MIT「後置詞句の方が後ろに来るの、意識してなかったけど私の書いた文はだいたいそのように振る舞ってる気がするな https://twitter.com/mit00042/status/1591983072899055616

【1-2 品詞】 特筆することなさそうなものは省略 hem が無変化動詞枠になっていて subj を二つとるらしい。 コピュラかな。

【2 名詞と後置詞】 格: 主格 無格 対格 属格 具格 後置格 の6つ

無格ってなんだろう?なるほど、複合名詞の前半要素などに用いるらしい。 名詞の曲用: 単複で変わり、母音幹か子音幹かで変わる。辞書形は単数主格っぽい?

名詞の数・格変化

子音幹ゆーちき雑な覚え方 : 複数語尾はáであり、母音連続を避けたいところにnが入る。 母音幹が結構複雑。。。 とりあえず「産出できないけど読める」を目標に仮覚えする。

対格:el っぽい音 属格:án/hom/homá  後置詞:i 具格:そうじゃない語尾
複数 á 
母音が衝突しそうなところで子音挿入
複数属格は単数属格との音衝突を避けるために home

よし

ところで格っぽい要素より複数っぽい要素が外側にあるのか

そういえばラテン語とかもなんとなく格を表していそうな部分よりも数を後に表していそうな部分が後に来がちだな

ラテン語のfemina (女性) の複数格変化

主格 feminae
属格 feminarum <- feminasum
与格 feminis
対格 feminas
奪格 feminis

ラテン語では複数っぽい成分のsが大体最後に来ている...? いや、 属格とかは格っぽい語尾のumの方が後に来てるな。あまり傾向はないのかも。

【属格の用法】

すなおだ

【具格の用法】

さもありなん

形式名詞

  • k もの
  • ho できごと
  • díma 一般的な事柄

  • 男女混合は女性。
  • 多数性が明示されている場合は単数形
    • なるほど
  • nやmで終わる名詞の中には単数主格と単数属格が同じものがある。
    • うーん類推由来かなあ
  • ṣagh- は単数主格が ṣá
    • まあ代償延長っぽい

擬属格

形が難しいので後で覚える

Section4. 動詞

不定詞・終止・過去分詞・未来分詞・命令形 の5形があり、時制・人称・常体/丁寧体で変化する。

常体

常体

丁寧体

丁寧体

1・2人称はlaが常体語尾の前に挟まる 3人称は本来の語尾が吹き飛び、caiに置き換わる

時制まわり

  1. 名詞を修飾
  2. 単体で単純な形
  3. hemを伴って完了や過去を表す

などができるらしい。 活用表、つらい... これ丁寧形に命令がないけれど丁寧に命令したいときはどうするんだろ お願い構文があるのかな

MIT「丁寧に命令、どうなんだろ...」

ゆーちき「丁寧な命令の代わりに、お願い構文を使うとか、疑問形にするとかあるのかな」

MIT「どうなんだろ、どうなんだろな~~~~」

受動

受け身

5 以降

細かい話が多いので省略

これでなんとか文法は一通り目を通した。。。

まとめ

文法をサッと眺めたところまでの体験や感想を記事にした。 続きの学習も記事にするかもしれない。

余談

イントネーションの図

この「文節ごとに上がって、文の最後で下がる」イントネーション、どこかで見たことあるような....

あっ。これだ。

『日本の言葉シリーズ9 栃木県のことば』p. 22, 平成16年2月20日発行 明治書院 編集代表 平山輝男 栃木県編者 森下喜一

そういえば栃木弁のイントネーションもこんなんだったな。最初聴いた時は「インドっぽいイントネーションだ」って思ったので、いろんな言語でちょいちょい見られるイントネーションなのかもしれない。