三行説明
- 足利弁は西関東方言に分類されるから、音声面ではほとんど東京と同じだと思ってたよ
- でも、足利の高年層の親戚と東京の若者で違うところも結構ある気がしているよ
- 年齢の差か地域の差かわからないよ
前書き
私の祖母は、両毛地方東部の栃木県足利市渡良瀬川南岸地域の出身である。 関東の言葉は一般的には西関東方言と東関東方言に分類される。 西関東方言は東京・埼玉・群馬の方言を含む分類であり、東関東方言は栃木弁や茨城弁などの、無アクセント方言、いわゆる「尻上がり調」の方言である。 足利はこの2方言分類の境界付近にあるが、地理上ぎりぎり西関東方言地域に属し、東関東方言地域と隣接するとみなされている。それゆえ私は、足利弁は語彙や文法については東京都心部と多少の隔たりはあっても、アクセントやイントネーション、発音の癖については都心部のものと大きく違わないと信じて疑ってこなかった。
しかしここ数年、家族や足利の人たちから離れ東京で生活する日数が長くなるにつれ、東京の若者言葉と足利の高年層の言葉は音声面でも違いがあるような気がしてきた。そこで、足利の高年層の私の家族や親戚たちの言葉について、筆者が気づいた音声面での東京ことばとの違いをいくつか列挙してみる。
この違いが年代差なのか地域差なのかわからないので、東京vs足利、もしくは若年層vs高年層ではなく、東京若年層vs足利高年層で表記を一貫する。
イントネーション
文の上昇調の多用
心配を表すときや嘆きを表すときなどに多用される。
「それがどんぐらい難しいか普通の人にはなかなかわからないみたい」 「ど」「ふ」「な」「わ」は、前の部分の最後よりもさらに低い高さから始まる
アクセント
平板名詞が尾高のように発音されうる
栗・渋谷・干潟・ジャルジャル*1などの名詞は、東京若年層は平板に発音する。しかし、これらを足利高年層は尾高にも発音する。
「ジャルジャルが出てるよ」
名詞の最後が長母音で終わっているときに、平板名詞が-1型名詞のように発音されうる。
「学校」のように、最後が長母音で終わっている単語については、東京の若年層がもっぱら平板型で発音する名詞が、足利の高齢層では−2型(後ろから2番目が高く、一番後ろが低い形)にも発音されうる
発音
機能語の弱化
文頭の「それで」が[sɵe] (そえ〜すえ)くらいに発音されたり、文頭の「だから」が「daɰa」(だぁ)くらいに発音されたりする
「だめ だ だめだ(って言われた)」がdameddamedaのように、母音が落ちて子音が内破されることもある。
終わりに
東京からほど近い関東のうちでもこれだけ発音の異なるところがあるのだなあ... 日本各地の音声現象、もっと記録されてくれ〜
*1:お笑い芸人のコンビ